【雪の心】
今日、木の葉の里に初雪が降った。
深夜の三時を回ったころ、白いものが舞ってきた。
こりゃあ、明日は雪かきの任務が入るか、と白い息を吐きながら
銀髪の男「はたけ カカシ」は言った。
そして、愛しい子が待つ家へと足を進めた。
家に近づいてみれば、その子の気配がはっきりしてくる。
そこで、カカシはおかしいことに気づいた。
いつもなら、寝ているはずの時間にもかかわらず
その子は起きていた。
ドアを開けたが、部屋の中は暗かった。
しかし、ナルトは起きているのだ。
気づかれないように部屋に入り、ナルトを後ろから抱きしめた。
「ナ~ルト、こんな時間に何やってんの?」
「あ、カカシセンセー。お帰りなさいってば。」
「ただ~いま。」
これが日常なのか、ナルトは気配なく近づいてきたカカシにちっとも驚かなかった。
「で、何してたの?」
耳元で囁けば、ナルトは擽ったそうに身体を摺り寄せてくる。
「ん、雪・・・・・見てたってばよ。」
「雪?」
「うん。」
降り出したのは、ついさっきからだぞ?
それまで起きていたと言うのか。
「ナルト、今起きたの?」
「・・・ううん・・・・眠れなくてさ・・・・。」
口は笑っているが、目が泣きそうなほど歪んで、それを必死で耐えているのが伺えた。
大抵、ナルトが眠れなくなるのは、嫌なことがあった日だ。
カカシが任務でいない時、寂しがりはするが眠れなくはならない。
だが、誰かが怪我をした・死んだなど他人が不幸になることがあると、決まって寝なくなる。
眠くないのではなく、自分の意思で寝ないようになってくる。
そのことを必死で隠そうとするが、カカシは等に知っていた。
それが、酷くもどかしくてどうしようもない時もあったが、
ナルトから話してくれるのを待つようになった。
「なんか、あった?」
「・・・・・・・・・・」
ナルトは、何もしゃべってはくれなかった。
だが、カカシのベストをしっかりと握り閉めた。
ポスっとカカシの胸に額を落とした。
「・・・・あのね・・・・。」
ポツリとナルトは話し出した。
「ん?」
「あのね、この頃仲良くなった犬が・・・・・居たんだってばよ。」
震える声で、カカシの耳にやっと入るくらいの大きさで、ゆっくりと話した。
「その犬は、野良だったんだってば。だから、ずっと一緒にいたってばよ。
・・・・・・それが、悪かったんだってば。
・・・・・・・・・その犬・・・・・・・死んじゃったってばよ・・・・・。」
犬が死んでしまったのは、事故かそこらであるなら、ナルトも自分を追い詰めたりしないだろう。
つまり、事故ではなく、人の手によって殺されたのだ。
「オレのせいで、オレが構わなかったら、あの犬は死なずにすんだんだってば!オレさえ構わなければ!!」
嗚咽を殺して、涙だけを流した。
泣く姿が、ただでさえ小さな身体をより一層小さく見せていた。
カカシは、ナルトを強く抱きしめた。
ナルトの溢れるほどの優しさに、里からの理不尽な迫害。
カカシまでも顔を歪めた。
「どうして、この里はこんなにも愚かなんだろうね~。」
やんわりとした口調だったが、目は明らかに怒りに満ちていた。
ナルトは、誰よりも優しく、誰よりも壊れやすい繊細な子だ。
雪のように柔らかく、温かく、解けやすい。
そんな子を、どうして痛めつける?
どうして、すべてを奪おうとする?
この子を冒涜するなら、四代目を冒涜したも同じだということに何故気づかない?
こんなに綺麗な涙を流せるのに、こんな扱いをされても穢れない子なのに。
「ねぇ、ナルト。こんな里、オレと抜けちゃおっか。」
ナルトが、弾かれたように顔を上げた。
目元はすっかり赤くなてしまっていて、見るからに痛々しい。
「セン・・・何言ってるってば?」
ナルトは、絶対に里抜けはしない。
いくら酷い扱いをされても、この里を愛してしまっているから。
本当に・・・・こういった所は、先生とそっくりなんだから。
カカシは苦笑をもらした。
冗談だよと言えば、ほっと肩をおろした。
半分は冗談だけど、半分は本気だよ、ナルト。
お前のためなら、この命だって要らないよ。
「ナルト、犬が死んでしまったのは、お前のせいじゃな~いよ。
少なくても、オレにはその犬が幸せであったと自信を持って言えるよ。」
「・・・・え?」
後ろから抱き込んでいたナルトと向かい合わせに座り、おでこをくっつけた。
「その犬はさ、野良で邪魔者扱いされてたんだ。それをナルトが相手してあげたんでしょ?
見向きもされないで、長い時間すごすよりも、短くても楽しい時間をすごしたほうが良いでしょ。
だから、その犬は幸せだったと思うよ。」
「せんせえ・・・・。」
碧い澄んだ目から、大粒の涙が頬を打った。
犬に対しての謝罪と、礼とカカシに対しての感謝の涙だった。
「ナルト、怒ったって良いんだよ。自分の気持ちを素直に出しなさい。
オレが、ちゃんと受け止めるから。」
そうして、二人お互いの唇を深く重ねた。
何だこれ・・・・・・u