無く、泣く、亡く。
年に一度、忍びたちは全員参加の集会がある。
だが、集会といっても、それを理由とした花見なのだ。
しかし、どうしても警備をつけなければいけないので、影分身を飛ばしたりしている。
当日にカカシは、この日のことを子供たちに告げた。
「15分後に忍びの集会が開かれるから、遅刻しないで行くんだぞ〜?」
「「もっと、早く言え!!!!」」
忍びらしからぬ足音を立てて、集会場である広場へと急いだ。
着いてから、ひと悶着あった。
イノからどやされ、皆から呆れられ、カカシに制裁を加えて
遥か彼方まで蹴り飛ばした。
しかし、それも楽しい余興に変わって、皆でワイワイ騒いでいた。
一人の男が忍び寄ってきて、いきなりナルト目掛けて蹴りかかってきた。
しかし、カカシが透かさず止めてナルトを背に庇った。
「無粋なやつだね〜。・・・・ナルトに何のようだ。」
「何のようだぁ?決まってんじゃねぇか!そいつを殺すんだ!!」
カカシをはじめ、上忍達が殺気を出し始めた。
底冷えするような殺気すらも、相手の男は酔っているためにヘラリと流す。
ギャクに下忍たちが怖気づいてしまった。
「あらら?担当上忍さん達が下忍の子供たちを恐がらせてもいいのかなぁ?」
「黙れ、クズが。」
紅が噛み付くように言えば、男は豪快に笑いながら仲間を呼んだ。
ズラリと並んだ中には中忍だけではなく、特別上忍や上忍、暗部までもが揃っていた。
その中の一人が、冷たい目でナルトを見下ろし吐き捨てた。
「おい、九尾のガキ!ここに居るやつらはな、全員お前に家族を殺されてんだよ!!!!!」
ナルトは、ビクっと体を震わせて唇をかみ締めた。
握った拳が白くなる。
余りにも強く握ったため、爪が皮膚に食い込み赤い血が手の上を滑って地面に落ちた。
ナルトは何も話さなかった。
話しても無駄なことを知っているから。
けれど、答えなければ罵られることも知っている。
どちらに転んでも、ナルトに分が悪い。
「だんまりか・・・。答えろよ固羅ぁ!!テメェだけのうのうと生きていやがって!俺の家族を返せ!」
ナルトの顔めがけて放たれた拳は、当たることなく
カカシの手の中に納まった。
「おっさん、随分なこと言ってくれるじゃな〜いの?誰が狐だって?・・・・・・ざけんなよ固羅。」
徐々に力を加えて、男の拳を握りつぶす。
ミシミシと骨の軋む音がして、最後には粉々に砕かれた。
男が痛さの余りのた打ち回る。
手は原型など、留めていない。
それが手なのかすら危うく思える。
「お前らのせいで、この子がどれだけ傷ついたと思ってる?この子が一番の被害者なんだよ!!!!」
アスマがホルダーから出したクナイを勢い良く投げて、木に突き刺した。
丁度笑っていた女の髪を切るように狙って。
女は小さな悲鳴と共に地面に座った。
「・・・・・・・先生、もういいってばよ。それ以上したら、先生達、上忍資格剥奪されちゃうってばよ。」
ナルトがカカシのベストの裾を引っ張って、三人を止める。
声はしっかりしていたが、手が小刻みに震えていた。
「ナルト・・・・・俺たちの事は気にしなくて良いんだよ。・・・・・ナルトのためになら、こいつらを全員殺しても構わない。」
「俺は、そんなこと望まないってば!!」
弾かれたように顔を上げて、カカシの目を見た。
目には沢山の涙を溜めて、けれどそれを溢さないように必死になって。
「俺は、先生が先生じゃなくなるなんて嫌だってば!!俺のせいでこれ以上誰も傷つけたくないんだって!!」
とうとう零れてしまった涙は、今までの分も流すかのように次々に出てくる。
その間も、話すことを止めずにカカシ達に訴えた。
「幾ら先生たちが良いって言っても、俺が嫌だ!先生達は俺と九尾は別だって言ってくれるけど、今、俺の腹の中に九尾が居ることには
間違いないんだってばよ。ってことは、俺も九尾だって事なんだ。封印が解けないうちにって考えるのは当然の事だってば。
皆、大事な人を失って・・・・・・けど、九尾はここにいて・・・俺のせいなんだって!
だから・・・・・・・・だから!!」
声を出そうとしても、詰まって言葉が出てこない。
変わりに嗚咽が漏れ始める。
「ナルト・・・・ゴメンね。分かったから、泣かないで?」
紅が抱き寄せ、きつく抱きしめる。
その顔は、苦痛に歪んでいた。
「上忍さんたちは、手出しできねぇなぁ・・・。」
一人がナルトと紅を引き剥がし、本気でナルトを殴りつけた。
土煙を上げながら、吹き飛ばされた。
「ナルト!!・・・・貴様ぁ!!!!」
カカシが、殴りかかろうとした時
「やめて!!・・・・先生・・・・ダメだってば・・・・手・・・出さないで。」
よろよろよ立ち上がる。
「ナルト、こんなやつらの事を庇うことなんて無い!!!」
泣きそうなくらい顔を歪めて、大声を出す。
しかし、ナルトは首を横に振ったまま頑として聞かなかった。
「俺、先生の事、大好きだってば。だけど・・・・・だから・・・かな。俺のことで、先生が罪を被るのが嫌なんだってばよ。」
悲しげに、眉を寄せて笑う。
その姿は、いつもの笑顔ではなく。
『儚い』と言う言葉が、ぴったりと合う笑顔だ。
「おい、餓鬼。それじゃぁ、殺されても良いって事だな?」
ニヤニヤしながら言われれば、ナルトはすんなりと頷く。
そのことに、上忍たちを始め下忍やその場にいた者全員が驚いた。
まさかっと皆息を飲む。
「ナルト!!あんた、自分の言ってる事分かってんの!!!???」
今まで声を出せずにいたサクラが、勇気を出して怒鳴った。
それに続いて、シカマルが静かにけれど、辛そうに声を出した。
「ナルト、お前・・・・・。何でそんなに簡単に自分を捨てんだよ!!」
ナルトは、俯いて話し始めた。
「・・・・簡単じゃないってばよ・・・・コレでも、すっげぇ悩んだんだ。
ちっちゃい頃から、訳もわかんないまま殴られて、軽蔑されて。
けど、誰も助けてくれる人もいなくてっ!・・・・・・・。
そんなときに助けてくれたのが、先生達やイタチ兄ちゃんだった。
皆から、初めて優しさとか愛情とか教えてもらった。
里の皆が、ナルトを軽蔑しても、俺たちはナルトを軽蔑したりしないって言ってくれた。
生きろって初めていわれたんだってばよ。
だから、一生懸命生きた。
苦しいことがあっても生きたよ?
けど・・・・・・・もう、ムリだってば。
俺が生きてると、悲しむ人が大勢いるってば。
そんなの、耐えらんないよっ。
俺一人が死ねば、この里は平和に明るくなる。
だったら、俺・・・・・・・自分の幸せなんか要らないから、里の皆を幸せにしてあげたい。
だから・・・・・だから此処で、皆にさよならするんだってばよ。
でも、さすがにアンだけボコボコになった顔で逝きたくはないってばね。」
ポタポタとナルトの目から涙が零れた。
一滴ずつ地面に染み込んで、小さな斑点を作った。
顔を上げて、里人を見た。
まっすぐ、目をそらさないで。
その顔を見て里人はハッとした。
九尾の事件で亡くなった、四代目火影が後ろにダブって見えたから。
そして何より、あれだけのことをしても尚、里のことを考えていた優しさに今までの行動を恥じた。
どうして気がつかなかったのだろうか。
この子の優しさに。
被害者は自分達ではなく、加害者だと思っていたこの子自身が最大の被害者だと初めて分かった。
両親を奪われたばかりか、里全体からの執拗な暴力・迫害。
一番傷ついたはずなのに・・・・・・・・。
「サスケ、イタチ兄ちゃんが一族を殺したのは、俺が原因なんだ。だから・・・・・兄ちゃんを許してやって?」
目を見開いて、固まってしまった。
声を出そうにも、喉が渇いてうまく出せない。
ナルトは、ホルダーに手を掛けながら、下忍達一人一人に声を掛けた。
「サクラちゃん。いっつも困らせてばっかりでゴメンってば。笑っててね、俺サクラちゃんの笑顔、すっげぇ好きだってばよ!!」
ニカっと太陽みたいに笑う。
コレだけを見れば、いつもと変わりなく見える。
今まで言ったことを嘘だと言ってくれるような気がする。
「ヒナタ。俺、お前のこと、結構好きだってばよ!」
「キバ、赤丸。もう一緒に馬鹿やれねぇ。ゴメンな?」
一本のクナイを手に取り、徐に胸に当てた。
普通のクナイじゃない。
大きさが倍近くもある、大クナイ【煉獄】暗部の者がたまに使うだけで、
普通は手に入らない代物。
切れ味は、里の最高を誇るだろう。
「シノ。前・・・・・・俺のこと助けてくれたってばね。ありがとう。」
いい終えると、力任せにクナイを押し込んだ。
ズブっと肉に刺さる鈍い音がして、血が流れた。
「っ・・・・くっ・・・。」
即死にならないように、心臓スレスレを刺した。
皆に話しかける時間さえ稼げれば、それで良い。
「「「「「「「「「「「ナルト(君)!!!!!!!」」」」」」」」」」
地面に倒れる前に、カカシが腕の中に納まった。
カカシのベストやアンダーウェアが血で濡れていく。
「ナルト・・・・・なんで?・・・・なんでっ俺たちのために生きてよっ・・・ナルト!!」
目の焦点が合っていない。
呼吸も乱れて、耳元で叫んだカカシの声すら
もう・・・・届いてはいなかった・・・・。
「チョウジ・・・・・・。俺が、落ち込んだときに・・・・・お菓子・・・分・・けて・・くれ・・て・・・ありがとう。」
空を見つめたまま、話し続ける。
「イノ・・・俺に花・・・・よくくれたってば・・・・大・・事に・・・育てた・・よ・・・・わりぃけど・・・・後、頼むってば。」
「っ・・そんな言葉、聞きたくないわ!!あんたにあげたんだから、あんたが責任持って育てなさいよ!!」
最後のほうは、叫んでいるとしか思えなかった。
「・・シカ・・・・・・・ありがとう。」
「・・・・おう。いつでも待ってから、また来いよ。いつまでも、待ってからな。」
頬に流れた涙を拭きもせず、ナルトを見つめ続けた。
「カ・・カシ・・兄・ちゃん・・・・・・・・・ア・・・アス・・マ・・兄ちゃ・・・・・ん・・・・紅・・・・姉・・ちゃ・・・ん・・・・。」
アスマと紅も、ナルトの傍へ行き手を握った。
「ありがとう・・・・俺・・・幸せ・・・・だったっ・・・・てば・・・・里の人に・・・・・手・・・出しちゃ・・・ダメ・・・だってば・・・よ?」
紅は必死に頷き、ナルトの手をより強く握る。
アスマは、あぁと返事をし、カカシは頬を撫でながら頷いた。
最後に、にっこりと微笑み唇だけを動かした。
「皆、大好き・・・・・ありがとう。」
一筋の涙を流して、ナルトは息を引き取った。
「ナルト?・・・・・うそよね?ただ、寝てるだけなのよね?・・・起きてよ・・・・・お別れ何て嫌よ!!ナルトォ!!!!」
サクラが、首を振りながら叫んだ。
それにつられるように、全員が涙を流した。
ポンと肩を叩かれ、サクラたちはゆっくりと顔を上げた。
担当上忍達が、傍らに立っていた。
「サクラ、笑っていなさい。ナルトはお前に向けて、最後になんて言った?」
「イノ、お前はこれからナルトん家へ行け。植物とか全部引き取るんだ。」
「シノ、ありがとう。ナルトを助けてくれたのね。」
皆に声を掛けた。
「お・・・・俺たちが殺したんじゃないぞ!!」
一人が声を大にして叫んだ。
殺気を込めて、ギロリと睨む。
「ナルトは、優しいからお前らのことを許したけれど、俺は許さない!」
カカシが言い放つと、アスマが一歩前に出た。
「お前らは、うちはよりも貴重なうずまきの血を絶やさせたんだ。これで、他国からの攻めが一層強くなるぞ。」
うずまきの血。
四代目火影の血を受け継ぐナルトは、他国から恐れられていた。
鬼神とまで呼ばれた男の子供。
ましてや、腹に九尾を飼っていたのだから尚更だろう。
しかし、ナルトがいなくなった今
里を崩そうとする忍は、一層数を増すだろう。
いろんな意味で、ナルトは木の葉里を護っていた。
それを仇で返されれば、怒るのは当然である。
ナルトは優しすぎた。
その優しい心に、今までの現状が重くのしかかっていた。
誰も憎む事が出来ず、壊れていく心を毎日見ていた者は、
里の者に殺意さえ覚えた。
けれど、完全に壊れるまで・・・いや、壊れてもナルトは里を考えた。
それこそが、貴重なうずまきの血だ。
四代目も、こうして里を護って散ったのだから・・・・・・。
「カカシ、ナルトをこっちへ渡しな。」
いつの間に来ていたのか、五代目火影が腕を伸ばしていた。
壊れ物を扱うかのように、慎重に渡した。
「ナルト・・・・・、あんたって子は・・・・・あたしの夢をも砕きやがって・・・・・・。」
目元にはうっすらと涙が溜まっていた。
「カカシ、この子の最後を聞かせておくれ。」
「はい。」
膝を折り、片手を突いて淡々と述べた。
「・・・・・・・最後に、俺たちのことを・・・兄ちゃん、姉ちゃんって・・・・言ってくれたんです・・・・あの頃のように。」
「・・・そうか・・・。」
全てを包み込むような優しい眼でナルトを見た。
そっと頬に手を添えて、ゆるゆると撫でた。
「ナルト・・・・・・・・お父さん達には会えたかい?」
ポタポタとナルトの頬に滴が落ちた。
まるで、ナルトが泣いている様に見える。
「・・・・・・・・・・安らかにな。お前の邪魔をする奴はもう誰もいないから。」
初めて会ったときのように、額に唇を寄せた。
チュッと軽い音がした。
「・・・・・此処に居合わせる里のもの全員に、処罰を言い渡す。」
辺りがざわめきだした。
横暴だと騒ぎ出すモノもいる。
「お黙り!!!!!!!!!!!!!!」
耳が劈けんばかりの大声を出して、黙らせた。
「この子に何の罪が有った?九尾とこの子は別だ。そんな事すら分からない馬鹿共がどうして私刑などした?」
一気に押し黙ってしまった。
しかし、綱手は言葉を緩めなかった。
「私刑が知られていないとでも思っていたのか?しかも、英雄気取りかい?・・・・・・・ふざけんのも大概におし!!!
ナルトのお陰で平和に暮らせていたことも知らないでっ!!!!!この子がどれほど血を吐いたかお前らには分かるまい!!
四代目の血を引いていたから、九尾が体内にいたから、他の忍は恐れて木の葉を襲撃してこなかったのだ。
それをお前達は自らの手で捨て去ったのさ。あたしたちは一切手出しはしない。
自分達の力で何とかすることだね。」
カカシと綱手は同時に丑寅の方角を見た。
「?先生?」
「・・・・・来る。」
片方しか出ていない目を細めて、何かを感じ取っているようだった。
「さぁ、お前達、好きにやんな。カカシ、アスマ、紅、カカシ7班、アスマ10班、紅8班、あんたらは見学だ。
見ておきな、ナルトはこんな奴らから里を護っていたんだ。」
暗部が4人、地に降り立った。
「ふ・・・・・一部始終見せてもらった。四代目子息にして九尾の器、うずまきナルトの死去・・・・・・この里、貰ったあああああ!!」
そこからは、地獄絵図の始まりだった。
桜の花弁は真っ赤に染まり、馨しい春の匂いが鉄錆へと変わった。
「分かるかい?ナルトにはコレだけの力があったんだ。皆が暮らせていたのも、この子のお陰だったのさ。」
綱手の言葉が重く圧し掛かる。
3日後、木の葉は落ちた。
だが、夥しい屍の中にナルトと仲間達の姿はなかった。
遠く離れた偏狭の地に、一つの小さな墓があった。
墓前には花が添えてあり、線香が一本煙を天へと昇らせている。
年に数回、人々が集まり手を合わせていく。
それが誰なのか、知るのはそこに集まった者たちと
墓に入った、ナルトだけが知っている。
はい、尻切れトンボです。
書いてて途中で、うんざりしてきて断念しました。
あ〜、もう良いやって感じで。
これ書くのに、ネタがなくて逆立ちしながら搾り出したんです。
もう、スッカラカンです。
暫く、ナルトは書けそうにありませんu
どうぞ、ご勘弁を。
2005/05/04