さわさわと木々が揺れる。

心地よい風が頬を撫でながら滑って行く。

満月の光が辺りを照らし、桃色の花をぼやかしながら美しく見せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吸養花

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒髪の青年が、一人大木を陣取って酒を仰いでいた。

腰まである長い髪を風に靡かせながら、近づいてくる気配に耳を傾けた。

 

 

「シカマルぅ?お前、何やってんの?」

 

金の長髪を靡かせ、音も無く隣に降り立つ。

 

 

「あ?見りゃ分かるだろ。花見だ。花見。」

 

そう言って杯を差し出す。

「お?いいね。じゃあ、ご相伴にあやかろうか。」

 

杯を受け取り、ストンと隣に座る。

結ってあった髪を解いて頭を振ると、仄かに血の匂いが鼻腔を掠めた。

 

「お疲れ。ナルト。」

 

シカマルがそう言えば、ナルトは眉間に皺を寄せながら笑った。

 

「分かっちゃったんだ。」

 

「あぁ。」

 

 

他に何も言わず、杯に酒を注いだ。

揺れる酒に月が写り込む。

幻想的な光に包まれながら、シカマルはナルトの髪を梳いてゆく。

 

何を言わずとしても、シカマルにはナルトの。

ナルトにはシカマルの言いたいことや行動が、手に取るように分かる。

 

 

 

 

 

 

「なぁ、ナルト。桜の花が何でこんなにも綺麗なのか、知ってるか?」

 

 

シカマルは、相手に負担とならないようにゆっくりと聞きやすいトーンで話し始めた。

 

 

「桜の下には、幾重もの死体が埋まってんだと。その死体の血や養分を吸って美しい花を咲かせる。

 血は桜の淡い桃色となって、養分は個数となって現れる。非情にも残酷で美しい。」

 

ナルトは、自分達の様だと思った。

裏の自分達が死体で、表の自分達が桜である・・・・・と。

 

 

「俺たちみたいだと思わねぇか?」

 

裏では平気で人殺しをする。

しかし、表の俺たちはそんな穢れたモノなんて知らないと言うように

明るく光ってるんだ。

皆に気取られないように。

ただ、美しく笑ってればいいんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん。」

 

 

 

シカマルの肩に寄りかかりながら、宙を見上げる。

「なぁ、シカマル・・・・・俺、このままでいいのかなぁ?」

 

不意に伸ばされた腕を思わず掴んでしまった。

その発言が、表情が、余りにも儚く消えてしまいそうだったから。

 

「こうやって、掴んでくれるのはシカマルだけのような気がする。

 皆、俺が人殺しをしてましたなんて知ったら、逃げていくんじゃないかって、正直恐い。

 シカマルさえ居れば、他には何もいらないけど、でも、仲間として見てくれてた人を裏切るのは、辛い。

 俺達は、騙し騙され合いの世界に生きてるけど、せめて綺麗な心を持っているあの人たちを、裏切りたくは無いんだ。」

 

 

するりとシカマルの首に腕を回す。

ギュッと抱きしめれば、同じくらいの力で抱きしめ返してくれる。

そんな触れ合いが好きだ。

二人が唯一、安心できる時間。

お互いを感じることが出来る、ささやかな儀式。

 

 

「大丈夫だナルト。あいつらはそんなに柔じゃない。分かってくれさ。

 それに、俺は最後までお前の見方だ。どんなことがあろうとも、俺はナルトと共にいる。」

 

例えそれが桜の木の下に眠る死体だとしても、ナルトを輝かせるためなら

シカマルはその命を惜しむことは無いだろう。

 

桜のように美しく散らずとも構わない。

ただ、相手のために散っていけるのならそれは自分にとって

美しい散り方なんだと、そう思う。

 

誰も知らぬ辺鄙な所で咲いている桜のように。

知らぬ間に咲いて、知らぬ間に散ってゆきたい。

そう願うことすらも私達にとっては、罪でしかないのでしょうか?

 

 

 

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季節外れの桜の小説。

壁紙がとても素敵なもので、つい書きたくなって

衝動で書いてしまいましたu

タイトルの「吸養花」は私が勝手に銘銘したものですので、あしからず。

感想など頂けると嬉しいです。

フリー小説といたしましたので、お持ち帰りOKです。

(ただし、期間限定とさせていただきます。)

 

掲示されるときは、必ず、結城 淳の名前を入れてください。

 

それでは。

 

2005/05/22